増税の是非を徹底検証!たばこが増税したらやっぱり値上げ?

たばこを吸っている人にとって気になるのがたばこの増税問題ではないでしょうか。世間的に風当たりが強い喫煙行動を抑制するという名目で、煙草税が上がって、かつては200円台だったたばこ価格が今は400円を超えています。しかし議論の方向は更なる増税と更なる値上げ、という趨勢です。
このたばこの増税論には妥当性はあるのでしょうか?そしてそれによるたばこの値上げはどこまでいくのでしょうか。そして何よりたばこは本当に害悪なのでしょうか。ここではそれらの点について徹底的に検証していきます。
たばこの値段の6割が税金

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まずたばこ増税を考えるために、たばこの値段の中で税金が占める割合を見ていきましょう。
たばこにはいくら税金がかかっているのか
たばこの値段は、値段に対して税率何%いうことではなく、1箱に入っている紙巻きたばこの本数×税額で決まっているのをご存知でしたか。そしてたばこには1つの「たばこ税」ではなく、全部で5種類の税金がかかっているのです。その算定基準は以下の通りです。
「国たばこ税」:通常の製造たばこ 1000本当たり5302円
「地方たばこ税」:都道府県に1000本当たり860円、市町村に1000本当たり5,62円
「たばこ特別税」:1000本当たり820円
「消費税」:これだけは値段×8%
たばこの税金内訳
以上を標準的なたばこ1箱の値段に置き換えると、国たばこ税が24.7%、地方たばこ税が28.5%、たばこ特別税が3.8%、消費税が7.4%と価格の64.4%が税金だという、恐ろしい高率納税品だということがわかります。
これによって現在のたばこ税による行政の財政収入は
地方税収:1兆1308億円(道府県 2778億円、市町村 8530億円)
国税収収:1兆1395億円(国たばこ税 9253億円、たばこ特別税 2142億円)
となり合計で2兆2703億円の税収になっています。
たばこの値段と税金の歴史
このような高税率のたばこの税金はいったいどのような経緯で定められたのでしょうか。簡単に今までの歴史を振りかえります。
国たばこ税の歴史
もともとはたばこは無税でした。しかし日清戦争後の財政収入増のために、1898年に「葉煙草専売法」が施行され葉たばこは国が販売権を持つ専売制になりました。つまり税金ではなく、たばこ売上の利益を国庫に入れる形だったのです。
その専売制が廃止されたのが1949年です。日本専売公社ができ、国庫に納める分として「たばこ消費税」が導入されました。これが税金化の最初です。そして1985年に日本専売公社が民営化されて日本たばこ産業株式会社になったことと、消費税法が施行されたことで、「たばこ消費税」は「たばこ税」と名前が変わり、今に至っているのです。
いつの間にか「懲罰税」的な意味合いに
その経緯からわかるように、たばこ税は純粋に国の財政収入を増やすためだけの目的でした。その意味では自動車税や、固定資産税と全く同じです。しかしその意味合いが最近は変わってきました。
後でまた詳しく述べますが、たばこにはニコチンのような有害物質を含む約4000種類もの化学物質が含まれていて、健康に大きな影響を与えることは今や常識です。そのため喫煙者は年を取ったときに重い病気にかかる確率が高くなります。その事実が背景となって、喫煙は国の医療費を増やすのでその増額分を税金で回収するために増税するべきとか、値上げによって喫煙者を減らして医療費を削減するべきなどの理論で、たばこ税は増税され、その結果たばこの値段も上がってきているのです。
厚生労働省の「受動喫煙防止対策のあり方に関する検討会報告書」でも、「たばこ価格、たばこ税の引上げによって喫煙率の低下を図ることは重要」と、増税が健康増進のためだということを政府として明言しています。
これらを踏まえて、2010年の鳩山由紀夫内閣では明確にたばこ税増税の目的を「健康目的の為に喫煙者を減らす」したところ、たばこ税が本来の目的ではない「懲罰税」化しているという批判が起こりました。喫煙というレクリエーションが懲罰の対象なら、パチンコ税導入も検討すべき、さらには恋愛に対しても恋愛税を課税するべき、という議論さえ起こったほどです。
たばこ税の増税に関する議論
このようなたばこ税の増税に対して、政界を中心に考え方は一致していません。賛成派と反対派が激しくぶつかっています。そのあたりの議論をかいつまんでご紹介します。
「取りやすいところから取っている」という批判
たばこ特別税は1998年の創設以来、2003年、2006年、2010年と12年間で4回増税されています。これに対して消費税は5%から8%へ増税するのに17年間かかっています。ですからたばこ税はある意味異常なスピードで増税されているのですが、これは「文句を言わない喫煙者」という「取りやすい所から取っている」ことだ、という批判が、たばこ農家の団体である全国たばこ耕作組合中央会などから上がっています。
本当にたばこ価格を上げると税収は増えるのか
たばこ税の増税の目的は、狭い意味で言うと増大する医療費を賄うための国庫収入アップです。しかし本当に増税し、値段を上げた場合に税収増になるのか、むしろ税収減になるのではないかという検討も学者の間でされています。
まず税収が増えるというシミュレーションには以下のようなものがあります。
後藤公彦の「環境経済学概論」ではたばこ1箱の適正値段は600円程度であり、そこまで値上げをして仮に販売本数が減っても税収は維持できるとしています。
関西学院大学教授の河野正直は、日本禁煙学会のレポートで、同じ意味合いの価格を1000円をだとし、さらに喫煙による社会損失を加味して1400円が妥当だとしています。
厚生労働省研究班で奈良女子大学教授高橋裕子の試算ではたばこ1箱を1000円にすると、最大5兆9000億円の増収が見込めるとしています。一方京都大学教授依田高典は、禁煙しようと思った人の継続率が54%の場合は2.8兆円の増収。これに対して禁煙継続率が100%の場合は1.9兆円の減収と試算しています。
おおむねどの研究でも税収は維持または増えるという報告です。海外でも実際にたばこの税金と値段を上げても、税収は増えたという事例がほとんどです。
たばこ増税を巡る政治状況
これに対して増税に反対する政治家も当然存在します。特に全国で約13000軒いる葉たばこ農家、全国の約30万軒のたばこ販売店には与党である自民党の支持者が多いため、自民党議員に増税反対論者が多いのが特徴です。ただ自民党の中でも、消費税増税を避けるためにたばこ1箱を1000円にする議論が出て来て、それに厚生労働省や日本禁煙学会などが賛成を表明するなど、一枚岩ではありません。
しかし鳩山内閣という民主党政権になった段階で、2009年にたばこ税が1本あたり3.5円引き上げられ、たとえばマイルドセブンが300円から410円となり過去前例の無い大増税になりました。
ただしまた自民党政権になったおとで、増税論と反対論は対立しています。最近では2010年9月に自民党政調会長の石破茂が「たばこ税増税はたばこ耕作者、煙草屋に対する配慮が欠けている。取れる所から取るのは適切ではない。税というのは、公平性がなければならない」と増税論を批判をしています。政調会長の発言ですから、今のところ自民党内では増税に対しては慎重な姿勢も根強いようです。
世界のたばこの価格とたばこ税率

ではこのようなたばこ税は世界の標準から見てどうなのでしょうか。主な国のたばこの価格とその税率を見てみます。
価格は正解的には安い部類
「マルボロ」1箱の各国における値段は、以下のランキングになります。
1位 オーストラリア 2218円
2位 ニュージーランド 1942円
3位 アイルランド島 1841円
4位 マルタ(欧州連合)1714円
5位 ノルウェー 1536円
6位 セーシェル(東アフリカ)1401円
7位 アイスランド 1367円
8位 イギリス 1355円
9位 グリーンランド 1353円
10位 ケイマン諸島 1231円
11位 ニューカレドニア 1183円
12位 カナダ 1167円
13位 ジャージー 1112円
14位 シンガポール 1075円
15位 イスラエル 1048円
16位 フェロー諸島 1033円
17位 キプロス 1028円
18位 キュラソー島 945円
19位 スイス 938円
20位 フランス 933円
(中略)
24位 香港 814円
29位 アメリカ 753円
31位 マカオ 693円
51位 日本 460円
52位 マレーシア 453円
55位 大韓民国 444円
65位 タイ 394円
69位 台湾 352円
74位 中国 340円
いかがですか。これだけを見ると、日本のたばこの値段は世界標準から見た場合にまだまだ圧倒的に安い部類だと言えそうです。
主要国たばこ税ランキングでは25位中18位
次にたばこ税率をこれもランキングで見てみます。
1位 デンマーク  85%
2位 ポルトガル  81%
3位 イギリス  77%
4位 アイルランド  76%
5位 フランス  75%
6位 ベルギー  75%
7位 フィンランド  74%
8位 イタリア  73%
9位 ギリシャ  72%
10位 オランダ  72%
11位 ドイツ  72%
12位 アルゼンチン  70%
13位 スウェーデン  69%
14位 ルクセンブルク  69%
15位 ニュージーランド  68%
16位 ノルウェー  68%
17位 カナダ  64%
18位 日本  63%
19位 韓国  60%
20位 エジプト  56%
21位 タイ  56%
22位 カナダ  50%
23位 マレーシア  38%
24位 アメリカ  20%
25位 ロシア  11%
いかがですか。これも先進主要国25か国ののうち18位ですから、税率も決してまだ高い部類ではない、ということが言えます。
たばこの値段はどこまで上がる?
ではこのような事実を踏まえて、たばこの値段は増税されてどこまで上がって言うと想定されるでしょうか。
1箱600円を超えたら半数が禁煙
まず医薬品メーカーのファイザー製薬が喫煙者を対象に行った調査の中で「タバコの価格がいくら位になれば、禁煙しようと思いますか?」という質問には以下のような回答がありました。
500円くらい 23.6%
600円くらい 32.8% 
700円くらい 10.0%
800円くらい 7.8%
900円くらい 1.0%
1000円くらい 12.0%
1000円を超える価格 12.8%
引用元:ファイザー製薬「喫煙に関する47都道府県調査2016」
これから見ると、600円を超えると喫煙者の半数が禁煙を決意し、800円を超えると約8割が禁煙するということです。
社会全体では値上げ賛成派が7割。
またNTTコムリサーチが喫煙者、非喫煙者別に調査を行ったところ、たばこの値上げに賛成の人は全体の72%であり、特に非喫煙者では89%でした。喫煙者であっても19%が値上げに賛成しています。
また値上げに賛成した人に1箱の妥当な値段を聞いたところ、1000円が33%、1000円超が25%でした。これに対して喫煙者で1箱1000円になっても禁煙しない人は12%でしたので、ファイザー製薬の調査とほぼ同様の結果です。
引用元:NTTコムリサーチ「たばこの値上げに関するアンケート」
たばこは本当に害悪なの?
このように自民党の中はどうであれ、世間の流れは、たばこ税増税やむなし、値上げやむなし、ということですが、この論拠になっている「たばこは健康に害がある」ということは本当なのか、という点を簡単に見ておきます。
いまだに男性の3割が喫煙者という現実
まず日本たばこ産業が2015年に調査した「全国たばこ喫煙者率調査」では成人男性の喫煙率は31.0%でした。まだ3割の人が喫煙者のわけです。しかし1971年にはそれは83.7%でしたから6割減にはなっています。
たばこに含まれる3大有害成分とは
ではなぜたばこには害があると思われているのでしょうか。それは3つの有害成分が含まれているからです。
1つはニコチンです。ニコチンには依存性があり、心臓系に悪影響を与え高血圧や動脈硬化の原因になります。また非常に毒性があり、かつてはゴキブリの駆除に使われていました。
2つめはタールです。タールの含まれている煙には大量の発がん性物質が存在しています。
3つめは一酸化炭素です。一酸化炭素は赤血球中のヘモグロビンと結合し、ヘモグロビンの酸素供給機能を阻害します。したがって身体は慢性的な酸欠になり老化が加速します。
これらによってもたらされる主な病気は以下の通りです。
たばこがもたらず主な病気は?
1つはガンです。発がん性物質があるほか、ガンを抑制する遺伝子まで傷つけるので、発ガン率が非常に高くなるのです。特に「咽頭ガン」は非喫煙者に対して喫煙者は約30倍の発症率です。それだけではなく、肺ガン、口腔ガン、食道ガン、胃ガン、乳ガン、子宮ガンなど婦人科系のガンも含めた発症率が高くなっています。
2つめは心筋梗塞です。たばこに含まれる成分には血管を細くする作用を持つものがあり、これが心筋梗塞の発症率を非喫煙者の約3倍以上に押し上げています。
3つめは気管支ぜんそくです。喘息での死亡者のうち喫煙者は非喫煙者の約2倍多いというデータがあります。
4つめは2型糖尿病です。たばこと糖尿病が関係するとは意外ですが、厚生労働省によれば喫煙者の2型糖尿病の発症率は非喫煙者の1.4倍です。
5つめは慢性閉塞性肺疾患(COPD)で、これは慢性気管支炎と肺気腫のことです。気管支が炎症を起こし、肺の呼吸機能が低下してしまう病気です。将来的には世界的な死亡要因の最上位になると言われています。
6つめは胃潰瘍、肝炎、十二指腸潰瘍、膵炎などの消化器疾患です。
7つめは歯周病です。ニコチンによる血流悪化と、一酸化炭素による酸素不足が歯肉炎の原因となり、歯周病につながるのです。
8つめは、骨が弱まり骨折しやすくなる骨粗鬆症です。たばこによって血流悪化や胃腸不良が起こると、カルシウム不足になって骨粗鬆症の発症率が高まるのです。
これらの病気によってたばこ1本で、約14分寿命が縮まると言われているのです。
病気ではなくてもたばこは身体の機能を衰退させる
また具体的な病名はつかなくても、たばこは身体に大きな悪影響を与えます。
1つは女性の卵巣機能の劣化です。具体的には
女性ホルモンの減少
卵胞の発育不良
生理不順頻発
不妊率上昇
不妊治療の効果低下
閉経時期の早期化
など女性の妊娠や出産機能に大きな悪影響を与えます。
2つめは妊娠した場合の早産、流産のリスクのアップです。先に書いたようにたばこの中の一酸化炭素は身体を酸欠状態にします。その結果胎盤機能が衰え、胎児の栄養失調や酸素不足につながって、胎盤の早期剥離や流産などのリスクが上がるのです。そこまでいかなくても、胎内での子供の発育を遅らせます。喫煙女性の早産の発生率は非喫煙女性に対して約3倍、低体重児出産の確率も約2.5倍です。
3つめは男性側の精子の生命力へのダメージです。酸素不足は精巣の働きを劣化させ、そこで生産された精子の運動能力を下げ、受精確率を下げてしまいます。
以上のようにたばこは身体にも大きな害があるのです。
経済的にも大きいたばこの害悪
たばこが人間にもたらす害悪は以上のような直接的な健康上の問題だけではありません。
それは喫煙者の病気リスクが高くなることで、治療費は増える点です。社会全体におけるたばこの経済的なデメリットは、医療経済研究機関の「喫煙による経済的損失の推計結果」によれば、医療費の1兆2900億円の増大、そして喫煙者の早死による5兆8000億円の経済損失だということです。
受動喫煙の問題は?
さらにたばこの害悪は喫煙者本人より、受動喫煙による周囲への悪影響も大きいこともわかっています。これは喫煙者がたばこのフィルターを通して吸い込む煙よりも、周囲の人が吸い込む副流煙のほうが有害物質を多く含み、かつ煙を吸う時間が長くなるからです。
受動喫煙は以下のような病気のの発症率を高めます。
心筋梗塞
肺がん
乳幼児突然死症候群(SID)
ぜんそくなどの呼吸器疾患
具体的には1日20本以上のたばこを吸う喫煙者の妻は肺ガン死亡率が1.91倍になると言われています。さらに日本禁煙学会では日本の受動喫煙による死亡者数は年間2万人以上だと推定しています。
いろいろな禁煙方法
以上のようなたばこの害悪を聞き、さらに増税で値上がりまでするのであれば、ぜひ禁煙しようと思う人もいるでしょう。ただ禁煙は難しいのも事実です。そこでその禁煙を成功させるいくつかの方策を簡単にご紹介します。
意気込まないで1本だけ止めてみる
禁煙を「一生吸わない」と意気込んで始めると、禁煙中の心理的負担が大きくなり、結果的にそのストレスに負けてまた喫煙してしまいます。ですから、「まずはこの1本を止めよう」と思うことが大切で、その積み重ねでいつの間にか1日、1週間、1ヶ月吸わなかった、ということを目指しましょう。
たばこの代替物を見つける
喫煙者はタバコが好きなのではなく、手持無沙汰の解消や、たばこで「仕事終わりに一服」など生活の間のリズムを取っていることも多いです。ですからその代わりのものを見つけましょう。1番実行しやすいのは、煙が出ないBAT加熱式たばこなどを利用することです。
禁煙外来を受診する
それでもなかなか止められない、しかし止めたい、という場合は医師の力を借りましょう。禁煙外来のある病院を受診し、医師のカウンセリングを受け、ニコチンパッチやニコチンガムなどによる「ニコチン代替療法」、禁煙薬「バレニクリン」服用などの禁煙治療を受けることです。これはいくつかの条件を満たせば保険適応ですので、費用も少なくて済みます。
保険適用の場合の禁煙外来の標準的な費用は、3か月で12000〜17000円程度です。400円のタバコを1日1箱吸っていれば月に12000円ですから、1か月分のたばこ代で止められる計算です。


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