今のバイクは電子制御だらけ モーターショーで見た最新

3月23~25日、東京都江東区の東京ビッグサイトで国内最大級のオートバイ展示会「第45回東京モーターサイクルショー」が開かれた。内外のメーカーが最新のバイクを出展、多くの来場者の注目を集めたが、最近のニューモデルの特長はライダーの運転をアシストする電子制御装置が多数、組み込まれている点だ。背景には、エンジンの高出力化に伴い、安全に運転するために、こうした装置が不可欠となってきた事情があるが、一方でバイクそのもののコスト上昇の一因ともなっている。



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イタリアのスポーツバイクメーカー、ドゥカティのブースでは1台の赤いバイクが注目を集めていた。新型のスーパースポーツ「パニガーレV4 S」(排気量1100cc)だ。これまで同社のラインアップはL型2気筒エンジンが中心だったが、二輪レースの最高峰MotoGPでつちかったノウハウを盛り込んだV型4気筒エンジンを同社として初めて搭載。最高出力は214馬力と「量販市販車で最高」(ドゥカティジャパン)。乾燥重量わずか174キロの車体にスポーツカー並みのエンジンだから、その速さはとてつもないものだと想像できる。
 プロのライダーでもない一般の人が公道でアクセルを全開にすれば、車体がさお立ちになったり、後輪がスリップしたりするなどの危険性がある。スピードが出ている状況で急ブレーキをかければ前輪がロックし転倒しかねない。微妙なアクセル、ブレーキ操作が必要になるが、こうした操作を電子機器の力で手助けするのが電子制御だ。
 「パニガーレV4 S」の場合、主なものだけでも、コーナリング中のブレーキでもタイヤのロックを防げる「コーナリングABS」、加速時の後輪のスリップを抑える「トラクションコントロール」、路面や天候の状況に応じてエンジンの出力特性を変える「ライディングモード切り替え」、コーナーからの立ち上がりなどで車体がさお立ちになるのを防ぐ「ウィリーコントロール」、過度なエンジンブレーキを制御する「エンジンブレーキコントロール」など、電子制御が山盛り。さらにサスペンションも電子制御で、走行中の状況に応じその特性を変えるほか、クラッチを握らずにギアチェンジができる「クイックシフター」も備える。
 簡単に言うと、免許を取ったばかりのライダーでも、それほど危険な思いをせずに、プロに近い運転技術が手に入る仕組み。こうした機器を多数、組み込んだこともあり価格も328万円と2輪としては高価だが、ドゥカティジャパン広報・マーケティング部の五条秀巳さんは「ドゥカティはブランド力があり、いいものであれば高価でも納得していただける」と話す。ドゥカティとして、今後も最新の電子制御を積極的に取り込んでいく考えを強調した。


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ドゥカティのようにプレミアムブランドであれば多少高くても消費者はついてくるだろうが、より幅広い客層を対象にした大量生産を志向している国内メーカーの場合は事情が違う。スズキのブースでは新色の黒が追加されたばかりの排気量1000ccのスポーツバイク「GSX―S1000F」が展示されていた。ドゥカティほどではないが、最高出力148馬力と十分パワフルで、ABSはもちろん、トラクションコントロールも備えるなど安全装備にもぬかりはない。一方で、メーターははやりのカラー液晶ディスプレーを使わずふつうの液晶にとどめ、サスペンションも電子制御でないなど、見切るところは見切り、118万5840円とドゥカティはもちろん、ホンダやヤマハなど国内ライバルの同クラスモデルより安い価格を実現した。



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過去のスーパースポーツバイクのエンジンを流用し、余分な開発費をかけなかったこともあるが、それにしても安い。もともとスズキには、二輪、四輪を問わずコストパフォーマンスに優れた製品が多く、そうしたものをつくる努力を筆者は勝手に「スズキイズム」と呼んでいるのだが、スズキ二輪営業販促課の木下博之さんは「スズキでは最初に目標価格が決まり、それに合わせて開発陣が製品づくりに取り組む。その過程で、1円単位で本当に細かい部品までコストダウンに努めている。だからと言って安全装備は犠牲にしていない」と強調する。
 カワサキのブースでは発売されたばかりの「Ninja H2 SX SE」が飾られ、多くの人が写真を撮っていた。量販市販車で唯一、カワサキが持つ過給エンジン、スーパーチャージドエンジンを積むスポーツツアラーで、最高出力は200馬力。最高速度はリミッターの時速300キロ近くになるだろう。電子制御も満載だが、価格も237万6000円と高価だ。しかし、川崎重工業モーターサイクル&エンジンカンパニーの渉外担当部長、小林直人さんは「いい装備だからといって、やみくもに搭載することはしない。市場動向を見ながら価格を決定している。今は高価なバイクを受け入れてくれる市場環境だが、価格にシビアな時代もあった」と、国内メーカーとして価格アップにつながる電子制御機器装着には慎重姿勢を崩していない。
 ▽当たり前になる?
 電子制御の中で、ブレーキ時のスリップを防ぐABSは最も古くから使われてきた装備の一つだが、欧州連合(EU)加盟国でのバイク装備義務化の動きなどを受け、カワサキは原則として全てのバイクにABSを付けることを決定。バイクの名前の末尾に付けていた「ABS」の文字も「付いているのが当たり前だから」(小林さん)と、削除した。
 オーストリアのバイクメーカーKTMが発表した新型バイク「790 DUKE」(排気量800cc)は同社初の並列2気筒エンジンを搭載したミドルクラスのバイク。中間排気量ながらコーナリングABS、トラクションコントロール、モード切り替え、クイックシフターなど、ひととおりの電子制御を備え、価格は112万9000円。KTM JAPANの増岡淳さんは「このクラスでこれだけの電子制御が付いているモデルはないのではないか。価格も十分、競争力があるものと考えている」と胸を張る。今後も、より小さな排気量のバイクにも電子制御は広がっていくのかは、消費者を振り向かせられるような価格を設定できるかどうかが鍵を握っていると言えそうだ。







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